ゴールドは売り優勢?それでも突っ込みショートが焼かれる理由

読み物

「じり下げ、どかん上げ」を生む二つの時間軸|園長のひよこ説🐥

最近のゴールド、なんだかやりにくくありませんか?

高値と安値を切り下げながら、じりじり下がる。
「やっぱり下じゃ!」と安値でショート(価格の下落を狙う売り取引)した途端、ものすごい勢いで買い戻される。

🐱「園長。下がっているなら売ればいいんですよね?」
🐥「方向と、入る場所は別の話じゃ」

今回は、現在のゴールドを売りと買いのどちらにも決めつけず、金利・インフレ・需給・チャートの順に整理してみます。

まず事実:8月のゴールドは大きく上昇した

World Gold Councilによると、8月のゴールドは月間で13.3%上昇し、月末価格は4,563ドルでした。

世界の金ETF(株式のように売買できる、金を対象とした投資信託)にも180億ドルが流入し、保有量は121トン増の4,189トンと過去最高を更新しています。

8月19日には、米財務省が長期国債の買い戻し拡大を発表。長期金利とドルが低下し、ゴールドが約3%上昇する場面もありました。

つまり8月は、金ETFへの資金流入やドル安、金利低下などが重なり、「金じゃーーー!」となった月でした。

ところが、8月末から9月初めに空気が変わった

その後、強い雇用指標やインフレへの警戒から、FRBが金融引き締めを続ける可能性が意識されました。

ウォラー理事は9月3日、インフレの改善が続けば政策金利の据え置きを支持する一方、8月の改善が一時的なら、9月会合で利上げが適切になる可能性にも言及しています。

ここで市場が意識する基本形は、次の流れです。

インフレが高い
↓
金利を高く保つ、または引き上げる
↓
米国債など、利息のつく資産の魅力が高まりやすい
↓
金利を生まないゴールドには逆風になりやすい

現在の高金利は、ゴールドの上値を重くする要因の一つです。チャート上でも高値と安値を切り下げており、戻ったところでは売られやすい状態が続いています。

Fedが踏む「金利のブレーキ」

※Fed(FRB)とは、アメリカの中央銀行制度を指す呼び方です。物価や雇用の状況を見ながら、政策金利などの金融政策を決めています。

🐱「金利を上げて、みんなを苦しめたいんですか?」
🐥「そんな悪の組織ではない」

Fedが理想とするのは、ずっと高金利を続けることではありません。

インフレが落ち着く
↓
金利を下げやすくなる
↓
企業や個人がお金を借りやすくなる
↓
設備投資・住宅購入・消費が回復しやすくなる
↓
景気を支えられる

いま金利を高くしているのは、景気を壊すためではなく、物価を落ち着かせるためのブレーキです。

Fedの金利ブレーキと供給側インフレの関係を説明する図

でも、金利を上げても油田は増えない

今回の物価には、需要の強さだけでは説明できない部分も混ざっています。

景気・雇用の底堅さ
+
エネルギーなど供給側からの一時的な物価押し上げ
+
関税や地政学をめぐる不確実性

金利を上げれば、住宅・自動車・企業投資などの需要は冷やせます。しかし、金利を上げても油田や輸送能力が直接増えるわけではありません。

なおウォラー理事は、エネルギー価格や関税を、現時点で継続的なインフレ圧力の大きな源泉とは見ていないとも説明しています。つまり、供給側の価格上昇があっても、それがそのまま長期的なインフレになるとは限りません。

Fedにとって難しいのは、景気を冷やしすぎず、しつこい物価上昇も抑えなければならないことです。供給側の物価押し上げも混ざるなかで消費や雇用が急速に悪化すれば、Fedは物価だけでなく景気・雇用にも配慮し、利下げを検討しやすくなります。その場合、金利やドルの見通しが変わり、ゴールドが急反発する可能性もあります。

それでも、なぜ安値では強烈に買われるのか

金利が高いなら、ゴールドはもっと素直に下がってもよさそうです。ところが実際には、安値で急反発する場面があります。

短期の急反発を誰が起こしたのか、外から正確に確認することはできません。ただ、次の注文が重なる可能性があります。

  • ショート勢の利益確定
  • テクニカルな支持帯での買い
  • 金を中長期で保有したい投資需要
  • インフレや通貨・財政への不安からの需要
  • 将来の金融緩和を意識した買い

ショートの決済は、反対売買では買いです。そこへ新規の買いが重なると、下げ相場の途中でも急反発が起こります。

🐱「下目線は合っていたのに焼かれました!」
🐥「方向と入る場所は別じゃと言うたろう」

売り優勢でも安値売りがショートカバーで焼かれる仕組み

だから「じり下げ、どかん上げ」になる?

かなり単純化すると、現在の値動きは二つの時間軸で考えられます。

上では、高金利や実質金利、ドル高への警戒から戻り売りが入りやすい。高値と安値も切り下がり、じりじり下がる。

下では、利益確定・支持帯での買い・中長期需要が重なりやすい。下落が止まったと見られると買いが集まり、ショートカバー(ショートを決済するための買い戻し)も巻き込んでどかんと上がる。

つまり、売り優勢に見えることと、安値売りが安全であることは同じではありません。

チャートは、まだ売り側に分がある

日足や4時間足まで引いて見ると、高値と安値を切り下げ、戻りも弱くなっています。三尊天井(中央の山が最も高い、三つの山からなる天井候補の形)のように見ることもでき、短期的には売り側に分がある形です。

一方、4,300ドル前後は繰り返し買われてきた場所です。World Gold Councilも8月10日の資料で、4,000ドル付近を「粘り強いテクニカルな底」と表現しています。

まずは、4,250~4,300ドル付近の支持帯を明確に割るかどうかを見ます。

※支持帯とは、買いが入りやすく、下落が止まりやすい価格帯のことです。

この支持帯を明確に割り、戻しても回復できなければ、次に下値を支える可能性がある価格帯として、

  • 4,050~4,100ドル付近
  • 3,950~4,000ドル付近

などが候補になります。

ただし、これは順番に必ず到達するという意味ではありません。途中で買いが入り反発することもあれば、金利やドルの見通しが変わり、一気に切り返す可能性もあります。

あくまで、下落が続いた場合に次の反応を確認する場所として見ておく価格帯です。

また、三尊のネックライン(形が崩れるかを判断する境目)を割ったように見えても、すぐ上へ戻る「だまし」もあります。割った事実だけでなく、その後も回復できないかまで確認することが大切です。

今後、何を見ればいい?

方向を決めつけるより、次の点を観察した方が実用的です。

  • 戻り高値と安値の切り下げが続くか
  • 4,300ドル前後を明確に割るか
  • 割ったあと、戻して回復できるか
  • 安値で買われた反発が前回高値を越えられるか
  • 米金利とドルが上昇を続けるか
  • ETFなどの中長期資金が流出へ転じるか

安値を割って戻せなければ売り側が優勢。反対に、安値で繰り返し買われ、戻り高値を越え始めれば、下落構造が崩れつつある可能性があります。

園長のひよこ説🐥

いまのゴールドは、チャートだけならやや売り優勢に見えます。

ただし、安くなったところでは買いたい層も存在し、止まった瞬間に買いとショートカバーが重なることがあります。

下がっているから、安値で売る。

これでは方向が合っていても、途中の急反発で焼かれることがあります。

見るべきなのは「上か下か」だけではありません。

どこでは売られやすいのか。
どこでは買われやすいのか。
支持帯を割ったあと、本当に戻せないのか。

現在は、売り側に分がありそうに見える一方で、下には買い手も待っている。だから簡単には下がらず、ときどき強烈に戻る。

これが今回の、園長のひよこ説です🐥


※本記事は、相場で起きた出来事を学習目的で整理したものです。特定の売買やゴールドの購入・売却を推奨するものではありません。相場は複数の要因で動くため、ここで紹介した考察が将来の値動きを保証するものではありません。

参考資料